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第二次世界大戦以降、地球規模の感染を引き起こした新型コロナウイルスCOVID-19。アメリカ ノースウェスタン大学の学者が行った研究として、新型コロナに感染したマウスは体内にある様々ながんが小さくするという興味深い効果が見られてたと報じられています。

これはJCIという臨床研究ジャーナルに掲載された論文であくまでマウスを用いた研究として、新型コロナに感染し、それにより重度の症状になった場合、体内に独特の抗ガン特性をもつ単球が作られがん細胞を攻撃するというものです。

JCI - Inducible CCR2+ nonclassical monocytes mediate the regression of cancer metastasis
https://www.jci.org/articles/view/179527

COVID caused cancer tumours to shrink in mice – new study
https://theconversation.com/covid-caused-cancer-tumours-to-shrink-in-mice-new-study-243973

ノースウェスタン大学の研究者は単球と呼ばれる白血球の一種に焦点をあてる研究をおこなっていました。この免疫細胞は感染症やその他の脅威に対する体の防御において重要な役割を果たしており、過去の研究からがん患者は単球が腫瘍細胞が乗っ取られ免疫系から腫瘍を守るがん親和性細胞に変化してしまうことがあるといいます。

研究チームは研究を進めたところ、この単球がCOVID RNAの特定の配列によく結合する特別な受容体を持っていることを発見したといます。そこで黒色腫、肺がん、乳がん、大腸がんなど、さまざまな種類の進行がん(ステージ4)にかかったマウスで実験を行いました。

仮に理論が正しければこれらガン細胞は小さくなることが予想されます。研究でマウスに重度のCOVID感染に対する免疫反応を模倣するためこれら特殊な単球の生成を誘発する薬を投与しました。結果は驚くべきものだったと記載されており、研究対象となった4種類のがんすべてにおいてマウスの腫瘍が縮小し始めたとしています。

JCI179527.ga

記事では「通常の単球は腫瘍によって防御細胞に変換される可能性があるが、これらの誘導単球は抗がん特性を保持している。誘導単球は腫瘍部位に移動することができ腫瘍部位に到達するとナチュラルキラー細胞を活性化する。その後、これらのキラー細胞ががん細胞を攻撃し、腫瘍を縮小させる」というメカニズムだとしています。

通常、免疫療法は効果が出るのは症例の約20%~40%に過ぎないのですが、今回の新型コロナによるアプローチはT細胞に依存せずに腫瘍を選択的に殺す方法を提供しているといい、従来の免疫治療で効果がでない患者に対して有効な方法となる可能性があるとしています。

人間での効果は未確認

もちろん今回の研究はマウスを用いた初期研究であり人間でも同じ効果が現れる可能性は分かっていません。当然ですが重度のガン患者が新型コロナに感染してしまうと逆に命取りになる可能性も高いです。

一方、COVIDワクチンがこのメカニズムを誘発する可能性は低いと考えられています。これはウイルスのように完全なRNA配列を使用しないためです。しかしこの研究が進んだ場合がんと闘う単球の生成を刺激する可能性のある新しい薬やワクチンを開発する可能性を開く可能性があるとしています。

新型コロナというゴミのようなウイルスが人類に与えた影響は計り知れないものがありますが、今回がん細胞という解決が難しい敵を攻撃する有効な手段の一つとなる可能性が示されました。

*抄訳したものを掲載しています。医学的な内容につきましては必ず医師の説明を受けてください。