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科学誌ネイチャーに掲載された論文としてスタンフォード大学医学部らの研究チームによると、過去に帯状疱疹ワクチンを接種したことがある人はそうでない人より20%も認知症になる確率が低くなっていたことが分かったと発表しています。

研究によるとウェールズ在住の年齢が比較的近い28万2541人分のワクチン接種済みおよび未接種の成人の詳細な健康記録を元に調査を行った結果、2013年~2020年の研究期間の終わりまでにワクチンを接種した人はしていない人よりも20%低かったことが分かったとしています。

Shingles Vaccine Guards Against Dementia, Study Reveals : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/shingles-vaccine-guards-against-dementia-study-reveals

この両者のグループについては教育水準、オピオイド使用などの医療処置、他の健康状態の発生など、2つの大きなグループ間で統計的に異なる点はほぼなかったとしており、大きく異なるのは帯状疱疹ワクチンを過去に接種したかしていないかです。

現在認知症の原因となる脳にタンパク質がたまる根本的なトリガーとなる原因はよく分かっていません。これまでも複数の説が出ていたのですが近年、何らかの感染により結果的に認知症を引き起こされる可能性が疑われています。その一つとして帯状疱疹を引き起こすウイルスも該当しています。

この結果について研究には参加していないハーバード大学の医療政策専門家は認知症リスクの低下がワクチンによって休眠中のウイルスの再活性化が抑制された結果である可能性についても調査しており「ウイルスがニューロンに直接毒性を持つか、神経系で神経毒性のある全般的な炎症反応を促進するか、あるいはその両方である場合にこのようなことが起こる可能性がある」と指摘しています。
そのうえで「帯状疱疹ウイルスの再活性化はアミロイドβ沈着、タウ凝集、血管損傷など、アルツハイマー病の主な特徴を引き起こすと考えられています。」としており、結果はこの理論を裏付けており帯状疱疹をこれまで複数回発症した人では認知症の割合が高く発症中に抗ウイルス薬を服用した人ではその影響が軽減されたこともわかったとのこと。



研究チーム「この研究が非常に強力なのは、本質的にはワクチン接種を受けるには少し年齢が高すぎる対照群とワクチン接種を受けるのにちょうど十分な年齢の介入群による無作為化試験のようなものだという点です」としています。

一方でなぜ20%という差になったのかとう点についてはよく分かっていません。もちろんこの研究でも帯状疱疹が認知症の要因とはしておらず帯状疱疹ワクチンが本質的に認知症予防効果をもたらすことを証明するもとはなっていません。

*抄訳したものを掲載しています。医学的な内容につきましては必ず医師の説明を受けてください。