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イスラエルによる攻撃で注目を集めているイラン。この国家は昔から核兵器開発が進められていることはほぼ流出した資料などからほぼ確実とされています。一方でイランは「我々はの核開発は平和目的だ」と主張しています。ではなぜイランはIAEAの査察を妨害したり大深度地下に核施設を構築するような矛盾を繰り返すしていたのでしょうか?

イランは1970年にNPTに加入しており、1974年に国際原子力機関(IAEA)との間で包括的保障措置協定を締結しています。しかしこの国はIAEAによる検証活動等を通じ長期間にわたり、ウラン濃縮やプルトニウム分離を含む原子力活動をIAEAに申告することなく繰り返していた過去があります。

この時点でイランの主張は信頼性できないものになっているのですが、加えて昨今のイラン攻撃の名目となっているのは数年前にイスラエルがイランから入手した膨大な極秘資料です。具体的にはイスラエルが2018年に発表した内容として5万5000点あまりの文書を押収した内容を一部公開しています。

この資料は昨今注目されている大深度地下施設フォルドゥ核施設のものです。フォルドゥ核施設はイランが主張するには平和的核施設の一つです。ではなぜ平和的核施設をわざわざ地上80~90メートル下の地下に設ける必要があるのか。

世界中を見ても核保有国以外でこのような施設は存在しないと考えられるのですが、イランは2009年にIAEAへの書簡として「イランに対する軍事攻撃の脅威」を受けた結果このような形になったと主張。またIAEAに対し、この施設に最大3000台の遠心分離機を収容できるとも説明しています。

このフォルドゥ核施設については当時のアメリカ、フランス、イギリスが共同で「この施設の規模と構成は平和的核計画とは相いれない」としてほぼ核兵器開発に建設された施設だと主張。ロシアも非難したほか中国も懸念があるとして非難の対象となっています。

ウラン濃縮は既に実施済みか

核兵器製造となると行う必要があるのはウラン濃縮です。実はイランは既にこれを実施しています。イランはフォルドゥの施設にある2700台の遠心分離機で濃縮率60%まで増強したことを示唆する報告をIAEA側に行っています。

問題はこの60%の濃縮ウランで当然これ以上の濃縮はやろうと思えば可能と考えられます。目安として3週間前後で核兵器級のウラン濃縮が実現できるとされ量としては233kg前後で核兵器換算で数発分です。

しかしそのような素材を入手できたとしても次に北朝鮮のように核実験を行わなければならないとされ、現時点で核兵器そのものをイランが保有しているとはいえません。

IAEA「核兵器開発開発の証拠はない」

一方でIAEAは2025年6月19日までにグロッシ事務局長が「われわれは(イランによる)核兵器開発に向けた組織的な取り組みの証拠は何も持っていなかった」と発言しています。

これはどういうことなのか。仮にイランがIAEAが核兵器開発に向けた組織的な取り組みの証拠を持っていたら大変なことになります。そもそもIAEAが査察レベルで入手できる資料は表面上だけと考えられ非協力的なイランの実態を深く調査したものにはなっていないと考えられます。

平和目的ならば欧米に全公開すればいいだけ

単純な話として兵器でもない極めて平和的な核施設だけ行っていると主張するのであればイランはその全てを公にして核兵器開発疑惑を払拭すればいいだけの話です。それができない以上は隠している、核兵器開発を行っていると疑われるのは当然です。

イスラエル側としては既に何らかの決定的な資料・情報を元に今回の核施設攻撃を実施していると考えられます。イランは昔からウラン濃縮に強く固執していることは明白であり秘密裏にウラン濃縮施設を建設していたことも明らかになっています。それにもかかわらずIAEAの査察に対して抵抗し続けていることもまた事実です。

イランに対してまともな行動すらとれないIAEA、そしてイラン側の自らにかけられた疑念を解消する努力を怠り、そのイランに対する国際社会の対応であり、疑惑が晴れない以上はイスラエルが攻撃が行われるのは当たり前と考えられます。また米国もこれまで中東での核兵器獲得競争を生むことを避けるため軍事力による核武装を阻止すると既に言明しています。

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