トマホーク

アメリカが誇る長距離巡航ミサイル、トマホーク。一般的に艦艇から発射するシステムが採用していますが、ジープのような小型車両から発射する計画『Long Range Fires』は中止となったと報じられています。

計画の中止は海軍省が発表した2026年度予算要求における海兵隊の部分に記載されていたもので、公式にキャンセルされたものになります。このLong Range Firesは2020年に「陸上配備型のトマホーク巡航ミサイル能力を配備することを検討している」とアメリカ海兵が発表したことで明らかになったものになります。

Long Range Fires

システムは4×4統合軽戦術車両(JLTV)を改造し遠隔操作ユニットを搭載した装輪タイプが用いられ、1発のトマホークを背中に搭載したモデルになります。しかしアメリカ海兵隊によると「LRFシステムは厳しい遠征や沿岸環境では運用できないと結論付け、プログラムを終了することを決定した」と発表しました。
ただし具体的に何が問題で運用ができないと判断したのかまでは記載はされていません。

▼同じコンセプトのNMESIS
nemesis-launcher-vehicle

Long Range Firesは事実上既存の「海軍・海兵隊遠征艦艇阻止システム(NMESIS)」を拡張するシステムです。こちらの兵器システムは同じく小型車両にミサイルを搭載して地上輸送可能な物となっています。対地、対艦攻撃を可能にするもので、欠点は射程の短さです。

またNMESISの別の欠点とされているのは一連のミサイル再装填です。NMESISは2発のミサイルを背中に背負い発射するというシステムが採用されているものの、野外の遠征環境で再装填するということに課題があるとされています。

Long Range Firesでは1発のトマホークしか運用できないためさらに装填頻度は高くなる恐れがあります。トマホークもNMESISのミサイルも人間の手で運べるような大きさではないため装填する専用の重機が必要です。もちろんそのミサイルを輸送するトレーラー等も必要であり人的リソースが多く必要となるシステムとなっています。その運搬や装填作業も使い捨てドローンや対中国といった高度な戦場では高リスクとなる可能性も考えられます。

つまりこのような一連のシステムそのものが脆弱性がある可能性が高く、単射しかできないシステムはイージス艦など大量のトマホークを運用できる兵器に比べて非常に安価である一方で手間が多いということになります。

参考