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アメリカの空母を中心に様々な艦艇が周囲に展開しているのですが、その索敵を破り仮想魚雷で空母を撃沈させることに成功したことがあるのはスウェーデン海軍です。今回はそのお話を紹介していきます。

海軍が運用する兵器、もちろんアメリカ軍が運用する兵器の中で最も高価なのは空母です。これは船体だけにとどまらず搭載した多数の航空機と数千人の乗員も含まれます。そのため空母が出撃する場合などは空母打撃群として空や水中からの脅威から周囲を守るように配備することで空母としての戦闘能力をフルに発揮できるようにしています。

攻略不可能と思われそうな空母打撃群ですが、実は過去に仮想魚雷を用いた攻撃で空母そものの価値として60億ドルあるニミッツ級航空母艦の第9番艦USS ロナルド・レーガンが撃沈されたことがあります。

▼2005年の演習で撮影されたUSS ロナルド・レーガンとゴットランド級潜水艦
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これは2005年に行われたスウェーデンとの演習の際にそのような判定が出たというものになるのですが、当時スウェーデンが用いた潜水艦は1995年に進水した新しいとは言えないゴットランド級潜水艦でした。

ゴットランド級潜水艦はディーゼルエンジンを搭載した潜水艦になるのですが、高度に最適化されたスターリングエンジンを搭載しています。これにより非常に静かなエンジンとなっており、バッテリーも充電することができます。このバッテリーからの電気でスクリューを回転させることもできます。

一般的に認識ではディーゼル潜水艦は原子力潜水艦よりも静かと言われているのですが、必ずしもそうではありません。原子力潜水艦の問題点は原子炉から発生する熱を常に冷却する必要があり、この冷却を回す音が出ることがあり場合によってはディーゼル潜水艦の方が静かに航行できることもあるといいます。

演習では実際にディーゼル潜水艦のゴットランド級潜水艦がロナルド・レーガンから発せられるアクディブソナー(映画ではピーンという音で表現される)をすり抜け、ディーゼル潜水艦は複数の架空魚雷を発射、このうち複数本が命中し空母を撃沈したと判定。一連の攻撃後もゴットランド級潜水艦は無傷だったとしています。

米海軍が対応するハメに

この出来事について、空母が30ノットの最高速度を利用して連続魚雷攻撃を回避できたであろうと推測する人もいるらしいのですがあくまで予想であり検証はされていないといいます。何れにしても複数本の魚雷が命中していたということからたとえ1本でも魚雷を命中すれば戦闘不能となり沈没は免れても長期間の修理が必要になります。

ゴットランド級潜水艦は空母の1/60程度、約1億ドル程度しかしない潜水艦ですが、60億ドルもの価値がある兵器を破壊できたとすればアメリカにとっても脅威となります。この演習では非常に安価な兵器であったとしても空母が撃沈されてしまうということが分かったことで米海軍は既に対処済みだとしています。

ちなみにアメリカ海軍が当時どこまで本気を出してこの演習をしていたのかは明らかになっていません。基本的にフルに能力を発揮することは自国の戦闘能力を見せることにも繋がるためある程度抑えた可能性は十分に考えられます。

参考