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新型コロナウイルスに感染した場合に発生する症状として嗅覚異常があります。これに関して、治った後も長く嗅覚が戻らないという症状が確認されているのですが、コルチコステロイドの使用が推奨されているものの「正しい選択肢ではない」と研究結果が発表されました。

これはベルギー、ブリュッセルのサンリュック大学クリニック大学耳鼻咽喉科、イギリスのイーストアングリア大学ノリッジ医科大学など10人以上の耳鼻咽喉科の研究者が共同で見解を示した論文で、現在新型コロナウイルス感染症により嗅覚障害を直す薬として全身性コルチコステロイドの治療が推奨されているものの、少なくとも嗅覚喪失の最初の治療選択肢であってはならないと結論付けています。

Doctors Identify The Best Treatment For COVID-19 Smell Loss, And It's Not Steroids
Systemic corticosteroids in coronavirus disease 2019 (COVID‐19)‐related smell dysfunction: an international view - Huart - - International Forum of Allergy & Rhinology - Wiley Online Library(論文)
コルチコステロイドは市販の薬にも含まれている成分になるのですが、その上で、研究チームによると一般的に鼻が詰まっている、または炎症を起こしている人に処方されるものの、新型コロナウイルスによる嗅覚機能障害とは原因が異なると考えられており服用したところで機能しない可能性があるとしています。

その上で、研究チームは新型コロナウイルスで嗅覚障害を患った場合、その嗅覚を回復させる方法は匂いトレーニングを最初に行うことを強く推奨しています。

新型コロナウイルスに感染した人の約60%で嗅覚異常を経験しており、以降数週間から数ヶ月ほど同じ症状を訴える場合があります。ただ、この嗅覚異常は多くの人で元に戻っていることが確認されており、2021年の初めに嗅覚機能障害のある1,363人のコロナウイルス患者を対象とした研究では、患者の95%が6か月後に匂いの感覚が回復したことが分かっています。

その上で、嗅覚を取り戻す方法として研究者はコルチコステロイドは体液貯留、高血圧、気分の落ち込み多くの望ましくない副作用が伴う可能性がある指摘しています。

記事では全く副作用がなく、1日たった2回の匂いのトレーニングで嗅覚を取り戻すことが副作用がなく良いのではないかと記事では説明しています。

1日2回、10秒間の匂いトレーニング

ではその嗅覚トレーニングはどう行うのか。論文には記載されていないのですが、2009年にドイツのドレスデン大学の研究チームが嗅覚に関する研究を行ったものがあります。これは上気道感染症、頭部外傷、特発性嗅覚喪失による嗅覚喪失を患った患者に対しての研究です。

方法としては4つのエッセンシャルオイルが与えられ、毎日、朝と夕方に、12週間にわたって1度に10秒間それぞれを嗅ぐように指導されました。結果、トレーニングを受けた多くの患者(テストグループの30%)で嗅覚機能が改善したという結果を報告しています。

さっくりと紹介すると、嗅覚トレーニングではクローブ、ローズ、レモン、ユーカリなど4種類の香りを使います。これ以外でも、香水、レモンの皮、バニラ、挽いたコーヒーなどの身近な香りを嗅ぎながら記憶を振り返ることが良いとしており、12週間以降については別の匂いを選び匂いをかぐことを繰り返すとよいとしています。

ただ、記事によると高齢者は嗅覚受容体ニューロンが少ないため、匂いの感覚を取り戻すのに時間がかかる場合があるとしています。

記事の内容はあくまで論文をそのまま記載しているものです。治療中の方は必ず医師に相談してください。